口呼吸をしているかどうか

お子様が「口呼吸をしている」かどうかは、ふだんの様子・話し方・歯並びや舌の位置でわかります。

子どものクセや状態をチェック

子どものクセや状態をチェックしてみましょう。
2つ以上当てはまれば「口呼吸」かもしれません。

  • 鼻がよくつまる。
  • ロをポカンと開けていることが多い。
  • いびきをかく。
  • 前かがみで、姿勢が悪い。
  • 食べているときにペチャペチャ音をたてる。
  • 話すときの舌の位置がどうもおかしい。
  • 何かを飲み込む時に舌が前に出てくる。
  • 上の歯列の形が逆V字型になっている。
  • 上あごの天井が高い。
  • 扁桃腺が腫れたり、風邪をひきやすい。
  • 寝汗をかく。
  • 寝ているときに立ったり座ったりする。
  • 睡眠時間が足りているのに、朝から疲れている。
  • 中耳炎になりやすい。

不正咬合を生み出す悪循環

口呼吸を続けていると、不正咬合を生み出す悪循環が起こります。
この悪循環を子供のうちに断ち切ることが大切なのです。

口呼吸をする
舌の位置が悪くなる
頬の圧力が上の歯列にかかりやすくなる
上あごが狭くなる
下あごが狭くなる 下あごの位置が悪くなる
さまざまな不正咬合が生じる
叢生 上顎前突 開咬 反対咬合

01口呼吸をする

口を開けたまま呼吸をするので、口の中が乾き、唾液による殺菌作用が不充分になり、むし歯や歯周病、口臭などの原因になります。
また、風邪をひきやすく、咽頭炎や扁桃炎にかかりやすくなります。
口呼吸をするときは空気をスムーズに通そうとして、舌を本来あるべ正しい位置よりも下げています。
舌の位置が正しくない口呼吸を続けていると、不正咬合を生み出す悪循環が起こります。

02舌の位置が正しくない

口呼吸をするときは、気づかずに舌の位置を低くしたり、前に出しています。このクセがつくと、はっきりと発音できなかったり、食べ物をうまく飲み込めなくなったりします。
舌の変なクセは、歯並びにも影響します。
上あごが狭くなり、下あごが後ずさりして「上顎前突」になったり、舌の位置によっては「開」になったり、下あご全体を突き出して「反対咬合」になったりします。
舌の位置が悪いと、奥歯でしっかり噛むこともできません。

03気道が狭い/鼻がつまる

体質的なものもあるかもしれませんが、子どものうちは扁桃腺が腫れやすいため、アデノイドが大きくなって気道が狭くなりがちです。
また、鼻の粘膜が炎症をおこしやすい時期でもあります。
気道が狭くなったり、鼻がつまったりすると、鼻から呼吸ができなくなるため、口で呼吸をするようになります。

04口蓋が狭い

遺伝で口蓋 (上あごの骨)が狭い人もいますが、奥歯できちんと噛まないために口蓋が広がらず、狭いままになる人もいます。
口蓋が狭いと、前歯が並ぶ場所が足りず、はみ出して「叢生」や「上顎前突」になります。
口蓋を上あごの天井と考えると、その天井裏には鼻腔(鼻の穴の奥)があるため、口蓋が狭いと鼻腔も狭くなり、鼻気道を充分に確保できません。
矯正歯科治療にとっては、この不正咬合を生み出す悪循環を子どものうちに断ち切ることが大切なのです。

あごの骨の形ができあがる前に治療することが大切です。

骨格が完成した成人の不正咬合は、土台のあごの骨が狭くても広げることはできないので、歯のみを移動する矯正歯科治療で対処することが多くなります。
この場合は抜歯をしてスペースを作り、上下すべての歯にブレースと呼ばれる矯正装置を用いてカムフラージュするような治療をするしかありません。期間は一般的に2~3年かかります。

ただ、口腔外科であごの骨を切る外科的な手術を行い、上あごの歯列を拡大することもまれなケースとしてあります。

つまり、あごの骨の形ができあがってからの矯正歯科治療は、時間と費用の負担が増大します。
それに対して、子どもの場合は上あごを拡大する拡大装置をつけるだけで、上あごの骨を簡単に広げることができ、メリットも大きいのです。

※外科的な手術 / corticotomy や Periodontal accelerated osteogenic orthodontics

スキャモンの発達・発育曲線

20歳での成長発育を100%として考え、体の各組織の発達・発育していく特徴を4つのパターンに分けてグラフ化したものです。

リンパ型
扁桃リンパ節などのリンパ組織の発達。
神経型
脳の重量に代表される神経系の発達。頭囲も関係する。
一般型
身長・体重や胸腹部にある臓器の発育。
生殖型
第二次性徵。
体の各組織の発達・発育していく特徴を4つのパターンに分けたグラフ

子どもの頃についた舌の変なクセは直りません

口呼吸の原因のひとつである扁桃腺の腫れは、個人差はありますが、12歳前後をピークとして小さくなります(上のグラフ・リンパ型を参照)。
それにつれて、口呼吸は改善されます。
しかし、簡単には改善できない問題があります。
口呼吸の習慣で、舌やくちびるのまわりの筋肉が覚えた悪いクセは、そのまま残ってしまいます。
口もとがだらしなく、舌足らずの話し方や、食べ物が口からこぼれやすいといった変な食べ方もよくなりません。
あごの骨の形も狭いままです。
この環境では、矯正治療で歯並びを整えても、不正咬合が再発しやすいのです。

具体的な治療の流れ

1
治療の流れ

(固定式)拡大装置を装着します。
週に2回程度、保護者が中央のネジを回して、少しずつ上あごを広げます。

2
治療の流れ

上あごは3~4ミリほど広がります。

3
治療の流れ

3か月から6か月の間、安定するのを待ちます。
同時に、ブレースを前歯に装着して、歯並びをそろえます。

治療を進めると、逆V字型にとがった上あごが広がり、歯がきれいな曲線状に並びます。

治療前

治療前

治療後

治療後

このように、あごの骨の成長期を利用して、あごを広げたり、上下のあごの位置関係を改善したり、歯が正しく生えてくる環境を整える治療を「1期治療」といいます。
あごの骨の成長が終了してから、生えそろった永久歯をきちんと並べるための治療を「II期治療」 といいます。
1期治療であごの骨格や歯列を改善しても、歯並びの状態によってはII期治療が必要な場合があります。

※治療期間・治療結果はあくまでも目安です。個々のケースによって装置の装着期間や拡大幅は異なります。

拡大装置を使って、あご自体の拡大をめざします。

スケルトンタイプの固定式拡大装置を装着したところ

上あごの骨の拡大には、拡大装置を使います。
固定式の場合、起きているときも寝ているときも、一日中つけたままなので、拡大する力の効果は確実です。
装着した直後は「しゃべりづらい」「食べたり、飲んだりしづらい」という違和感がありますが、子どもたちの多くは一日たてば慣れてしまいます。

上あごを拡大するイメージ

上あごを拡大するイメージ